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多くの企業、特に中小企業やスタートアップでは、「今のところトラブルもないし、わざわざ顧問弁護士はいらないだろう」「何かあったらそのときに頼めばいい」と考えがちです。実際に、日々の業務の中で顧問弁護士の必要性を感じる機会は少ないかもしれません。
しかし、それは大きな誤解です。顧問弁護士が「いないこと」で発生しているリスクは、水面下で確実に蓄積しており、ある日突然、大きな問題として顕在化する可能性を秘めています。目の前に火種がないからといって、安心できるわけではないのです。
アンケート調査によると、現在顧問弁護士がいないと回答した割合は15.5%となっています。その一方で複数事務所と契約している企業は31.5%にものぼるなど、リーガルリスクに対する意識の違いが顕著に表れています。
出典:従業員規模50人以上の経営者89名へのアンケート調査(2026/8/7~8/14)│Fastask
企業を経営していく中で、毎月定額で発生する顧問料は確実に経営を圧迫する固定費となります。特に日常的に法律上のトラブルが起きない時期や、売上が安定せずにコストを抑えたいフェーズにおいては、弁護士のサービスをほとんど利用していないにもかかわらず毎月費用だけが継続して発生することに対して、大きな経営的負担やもったいないという意識が生まれやすくなります。
日々の業務の中で新規の取引先と大きな契約を結ぶ機会が少なく、従業員との労務に関するトラブルや取引先との揉め事なども一切発生していない平穏な状況では、弁護士にわざわざ相談すべき具体的な法律上の疑問や懸念点がそもそも思い当たりません。普段のビジネスが問題なく円滑に回っている状態では、専門家に毎月お金を払ってまで連絡を取る必要性を感じにくいのが実情です。
日頃から顧問契約を結んで毎月費用を支払い続けるよりも、何か具体的な問題や法的紛争が実際に起きてからその都度自分で弁護士を探してスポットで依頼すれば十分であるという考え方もあります。事前に月額の顧問料を支払って専門家との関係を築いておくよりも、必要になったタイミングだけ費用を支払うほうが無駄がなく合理的ではないかと判断されがちです。
取引先の数が非常に少なく、日々の業務で締結する契約書のパターンも完全に固定化されているような小規模な企業や個人事業主の場合には、年に数回あるかないかのごく偶発的な相談であれば、顧問契約ではなくスポット依頼だけで十分に対応可能です。
日常的に多くの従業員を抱えて複雑な労務管理が発生したり、新しい取引先と頻繁に条件の異なる複雑な契約書を交わしたりする企業では、予期せぬトラブルを防ぐための迅速なリスクヘッジが不可欠となります。
自社に顧問弁護士が本当に必要かどうかの分かれ目は、社内でどれほどの高頻度で法的判断を迫られる場面が生じるかという点と、万が一トラブルや紛争が起きたときに自社の事業や社会的信用に対してどれほどの深刻なダメージが及ぶかという2つの軸にあります。
「何か問題が起きたら弁護士に相談すればいい」と考えている企業も少なくありません。しかし、実害が顕在化してから弁護士に相談するのでは、事態はすでに複雑化しており、解決にかかる費用も労力も格段に大きくなります。
また、相手方との交渉においても、すでに法的に不利な立場に立たされていることが多く、企業にとって不利な条件での解決を余儀なくされる可能性が高まります。早期に専門家が関与していれば防げたはずの損害が、後から雪だるま式に増えていく、という事態は避けたいものです。
いざ取引先との深刻なトラブルや労働問題が発生した際、相談できる専門家がいないため信頼できる弁護士をゼロから探し出すところから始めなければならず、対応の初動が大きく遅れて事態がさらにこじれる原因になります。
専門的なリーガルチェックを受けずに取引先から提示された契約書をそのまま結んでしまい、後になって自社に極めて不利な責任や義務を負う条項が含まれていたことに気づいても、一度結んだ契約を覆すことは極めて困難です。
従業員との残業代未払い請求やハラスメントをめぐる労務トラブルに対し、初期の段階で適切な法的アドバイスを得られないまま対応を誤ってしまい、最終的に大規模な労働審判や損害賠償請求にまで発展してしまいます。
売掛金の入金遅延や悪質な顧客からの度重なるクレーム対応において、自社だけで何とかしようとして交渉が完全に膠着してしまい、最終的に代金が回収不能になるリスクや担当者の精神的負担が大幅に増大します。
自社のビジネスに深く関連する重要な法改正情報のキャッチアップが遅れてしまい、知らず知らずのうちに法令違反の状態に陥り、行政処分を受けたり社会的信用を失うという重大な経営リスクを抱えることになります。
法律的な解釈や正しい対応に迷った際、正確な正解がわからないまま経営者や限られた担当者が不安を抱え込みながら手探りで判断を下すため、本来集中すべき本業の意思決定が滞り経営全体のパフォーマンスが低下します。
「顧問がいなくても、これまで問題なかった」と思っていても、ふとした瞬間に見えないほころびが顕在化することがあります。ここでは、実際に企業現場で起きた“ヒヤリ”とした事例を2つご紹介します。
| 顧問弁護士がいないことで 起きたヒヤリ事案 |
自社で作成した契約書をそのまま提出したところ、重要な免責条項が抜けていると指摘され、交渉が振り出しに戻ってしまいました。 |
|---|---|
| 顧問弁護士がいる場合 |
顧問弁護士がいれば、事前に重要ポイントの漏れを防ぎ、信頼性の高い書面で交渉に臨めていたはずです。 |
| 顧問弁護士がいないことで 起きたヒヤリ事案 |
社員からのパワハラ申告に対応できず、ネットへの書き込みまで発展してしまいました。あわてて社労士に相談したものの、法的対応が必要と判明し、弁護士探しに奔走することに。社内でも「初動が遅い」と管理体制への不信が広がりました。 |
|---|---|
| 顧問弁護士がいる場合 |
顧問弁護士がいれば、初動から法的に妥当な対応方針を整え、早期沈静化につなげることができたはずです。 |
これらの事例は、特別な業種や規模の話ではなく、どの企業でも起こり得るものです。だからこそ、「いざ」というときの備えとして、日常的に相談できる顧問弁護士の存在が重要になります。
事業活動の土台となる各種契約書や利用規約、秘密保持契約書(NDA)について、自社に不利益なリスクが潜んでいないかを法的な観点から綿密にチェックや修正を行います。単なる文言の確認にとどまらず、将来のトラブルを未然に防止するための具体的な条項の提案や、ゼロからのオーダーメイド作成にも対応し、安全な取引関係の構築を強力にサポートします。
労働基準法をはじめとする複雑な労働法制に基づき、実態に即した就業規則の改定や、残業代請求、解雇をめぐるトラブル、社内で発生したハラスメント問題への対処法を助言します。従業員との深刻な紛争や労働審判への発展を未然に防ぐため、現場の状況に応じた適切な労務管理の体制づくりを継続的にバックアップし、健全な職場環境を守ります。
取引先からの代金未払いや売掛金の回収が滞った際の実効的な法的アプローチや、悪質な顧客からの度重なるクレームに対する弁護士名義での通知書作成・交渉を担います。自社の正当な権利を守りながら、損害賠償請求などの法的紛争を早期かつ有利に解決へ導くための専門的な実務対応を提供し、ビジネスの安全性をしっかりと確保します。
事業を展開するうえで影響を受ける各種法令の改正情報をタイムリーに提供し、自社サービスやWebサイトの広告表示、利用規約などが適法であるかを事前に確認します。また、ブランドや技術を守るための商標登録や知的財産の保護に関する相談に応じ、将来の致命的な法的リスクや行政処分を回避する予防法務の体制を万全に整えます。
企業の成長フェーズが進むにつれて、顧問弁護士がいないことのリスクは加速度的に大きくなります。
複数拠点や子会社を持つようになると、それぞれの地域や組織における法規制の遵守、契約関係の複雑化、グループ会社間の法務ガバナンスなど、対応すべき課題が急増します。
株主構成が複雑になったり、取引先が大企業や海外企業になったりすると、より高度な契約書や、株主・IR対応、国際法務などの専門知識が求められます。
新規株式公開(IPO)を目指す場合や、ベンチャーキャピタルからの投資を受ける場合など、企業は厳格な法務体制とコンプライアンス状況を外部に説明する責任を負います。顧問弁護士の不在は、この「外部説明責任」を果たす上で大きな障壁となります。
このように、企業の成長に伴って「顧問不在=法務の穴」は拡大し、事業活動そのものを阻害する要因となりかねません。
顧問弁護士は、問題が起きたら単発で何かをお願いする人ではありません。彼らは、経営の質を支える「見えないインフラ」として、日々の業務に、そして経営戦略に日常的に組み込むべき存在です。
日頃から企業のビジネスを理解し、法務リスクを予測し、適切なアドバイスを継続的に提供してくれる顧問弁護士こそが、企業経営を安定させ、成長を加速させるための「備える体制」の一部となります。問題が発生してから動く「対処療法」ではなく、問題を未然に防ぎ、企業のポテンシャルを最大限に引き出す「予防法務」こそが、真の価値を生み出すのです。
一見、日常では差が見えにくいかもしれません。ですが、いざというときの対応力や判断の質には、確かな違いがあります。以下に、代表的な場面ごとの違いを整理しました。
| 場面 | 顧問弁護士がいない会社 | 顧問弁護士がいる会社 |
|---|---|---|
| 契約書チェック | ドラフトをそのまま使用。 内容の意味を深く理解せずに締結 |
法的リスクや交渉方針に即した 修正提案を受けられる |
| 労務トラブル | 社内対応で迷い、初動が遅れがち。社内の不安も拡大 | 即時相談が可能。 対応方針を整理し、早期解決を図れる |
| 新規事業 | 規制リスクや許認可の見落としで ストップすることも |
事前にスキーム設計や手続を確認でき、 スムーズに始動 |
| 資金調達・IPO | 法務整備が追いつかず、 信頼や評価に悪影響が出る |
社内外に説明可能な体制・資料を 整備し、準備を整える |
法律に関する相談が年に数回程度にとどまるような小規模な規模であれば、毎月の固定費を発生させずに必要なときだけ専門家に依頼するスポット対応も十分に現実的な選択肢となります。
日常の業務の中で次々と発生する細かな疑問や確認事項に対して、スピーディーに専門家の見解を得ながら事業をスピード感を持って進めたい場合は、顧問契約を結ぶメリットが大きくなります。
実際に大きなトラブルや深刻なクレームが表面化してから慌てて弁護士を探し始めた場合、最初の初動対応の遅れが命取りになり、すでに取り返しのつかない不利な状況に追い込まれているケースも少なくありません。
アルバイトや正社員を含めて従業員を雇用しており、雇用契約の内容や労働時間、ハラスメント対策などの労務に関する判断や具体的な相談が日常的に発生する環境にあるかを確認します。
毎月のように新しい取引先と個別の契約書を交わしたり、自社のサービス利用規約や秘密保持契約書の確認・修正を頻繁に行う必要が生じている状況にあるかどうかを振り返ります。
売掛金の入金遅延や、納品物の品質をめぐる取引先との意見の食い違いなど、ビジネス上のトラブルや債権回収の懸念が生まれやすい事業モデルになっていないかを確認します。
WebマーケティングやSNSを活用したプロモーションを積極的に行っており、景品表示法や薬機法、あるいは顧客の個人情報保護法に関するリーガルチェックが欠かせない状態かを見ます。
将来的な事業拡大に向けて、新しいサービスの立ち上げや外部からの資金調達、組織再編や上場に向けた法的なハードルを一つずつ確実にクリアしていくフェーズにあるかどうかを確認します。
社内に専門的な法務部門が存在せず、法律的な課題やトラブルが生じたときに社内で誰も正確な判断を下すことができない心細い体制になっているかどうかをチェックします。
経営者自身が日々のトラブル対応や法的ルールの確認のためにインターネットや書籍で調べる時間に多くの時間を奪われ、本業の意思決定に集中できなくなっていないかを振り返ります。
顧問弁護士の必要性は、企業の規模や事業内容、直面する法的リスクの大きさに大きく左右されます。毎月の固定費に対する負担感だけに目を奪われず、自社が日常的に抱える相談の頻度や、万が一トラブルが起きた際の経営への影響度をしっかりと棚卸しすることが大切です。
顧問弁護士がいない状態は、目に見えない分だけ危険な「静かなリスク」を企業にもたらします。今は表面化していなくても、水面下で蓄積された法務リスクが、ある日突然、企業の成長を阻害し、大きな損害をもたらす可能性は十分にあります。
トラブルが顕在化する前に、「トラブルにならないための相談先」を確保すること。そして、日々の経営判断において法的な裏付けを持ったアドバイスを得られる「備える体制」を構築すること。これこそが、企業が本来のスピード感を失うことなく、安心して事業を進めるための鍵となります。
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